現在、画材屋で売られている絵具の種類は、大きく分けて油絵具、水彩絵具、アクリル絵具の3種類があります。
また、アクリル絵具には通常のモノとは別に「アクリルガッシュ」と言う種類があり、知識が無いとどっちを買えばいいのか迷う事になります。
そして、当然ながら「同じアクリル」でも名前が違ってる分その性質も異なるので、ひょっとすると間違った絵具を使う事で制作がうまく行かない事もあるか知れません。
そこで今回は、アクリル絵具とアクリルガッシュの違いや、向いてる作品の傾向についても紹介していきます!
目次
アクリル絵具とアクリルガッシュの違い
アクリル絵具とアクリルガッシュの一番の違いは、「絵具に透明性があるか無いか」と言えます。
そして、「アクリルガッシュ」は基本的に不透明の絵具で下の色を覆い隠す力に優れてるのが大きな特徴です。
また、アクリルガッシュ以外のアクリル絵具は、不透明と透明が混ざった形で販売されているのが大きな特徴と言えます。
そして、その内容を見分けるには、日本の絵具メーカーは表や裏に「透明・不透明・半透明・半不透明」と日本語で書かれたモノが多いのでそこで判断できます。
それ以外では、表や裏に四角いマスで「□・◩・■」と表記されているものがり、□のマークが透明で■が不透明と言う意味になります。
また、半分のマーク(◩)は半透明や半不透明と言う意味で、透明と不透明の中間の特性を持つ絵具となり、透明や不透明とはまた違った効果を生む事ができるのが大きな特徴です。
そういう意味では、アクリルガッシュよりもアクリル絵具の方が「より複雑な効果を楽しめる絵具」と言えます。
アクリル絵具とアクリルガッシュの共通の効果
アクリル絵具とアクリルガッシュの共通の効果としては、どちらも速乾性があり乾くと「耐水性」となるのが特徴です。
なので、通常の「水彩絵具」は乾いても濡らすと色が落ちますが、アクリル絵具とアクリルガッシュは一度乾くと水に濡れても色落ちはありません。
その為、どんどん色を重ねて水彩絵具では作れないような深みのある色彩を作る事が可能となります。
また、「油絵具」も上からどんどん色を重ねて塗る事が出来ますが、乾くのに時間がかかるのがネックと言えます。
ただ、今は速乾性の溶き油やメディウムもあるので通常よりも早く乾かせますが、完全に乾くとなるとそれなりの時間を要すのが現状です。
しかし、アクリル絵具とアクリルガッシュは30分もすれば完全に乾きますし、ドライヤーを使えばもっと短時間に完全に乾かすことができます。
その為、なるべく早く作品を作りたい場合は「アクリル絵具」か「アクリルガッシュ」を使用する方が効率的です。
アクリル絵具の主なメーカー
現在、画材屋で多く見かけるアクリル絵具の主なメーカーは以下の通りです。
- ホルベイン
- リキテックス
- ターナー
- ターレンス
ホルベインのアクリル絵具
ホルベインは1900年に創業された国内の老舗絵具メーカーで、昔からあるからか特に「油絵具」が有名です。
しかし、アクリル絵具の開発にも積極的で、現在あるアクリル絵具は「アクリリックカラーヘビーボディ」言う名前で売られていて、カラーは全113色あります。
そして、ホルベインのアクリル絵具の特徴はとにかく発色がきれいで、混色してもにごらないピュアな色彩がキープできる所です。
また、メディウム類も豊富にそろっているので、色を重ねるグレージングや絵具をチューブから出したままの厚塗りなど、どんな表現にも対応できるのも魅力と言えます。
さらに、価格も他のメーカーよりも安い価格帯で売られているので、初めて使用するならホルベインのアクリル絵具はおすすめです。
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ホルベインのアクリルガッシュ
ホルベインのアクリルガッシュは、「アクリリックガッシュ」と言う名前で売られていて、全107色あります。
価格は「アクリル絵具」よりも若干高くなります。
そして、アクリルガッシュの特徴は全ての絵具が「不透明」なので、下の色を透けさせたくない絵を描く場合はこちらの方が向いています。
また、乾くとつや消しの「マット」な表面となるので、表面につやを出したくない作品なども、アクリルガッシュの方が向いていると言えます。
リキテックスのアクリル絵具
リキテックスは1955年に創業したアメリカの絵具メーカーで、「アクリル絵具」を最初に世界に広めたメーカーとも言えます。
また、日本では1968年から発売が始まり、「速乾性の絵具」として注目されプロの絵描きから趣味で絵を描く人まで幅広く普及して行きました。
そして、現在売られているリキテックスは「レギュラータイプ」が全114色、「ソフトタイプ」が108色となっています。
ちなみに、レギュラータイプとソフトタイプの違いは絵具の硬さの違いで、ソフトタイプはレギュラータイプよりも柔らかい練りとなってるのが特徴です。
なので、水をあまり使用しなくとも伸びるので、水が使えない野外のスケッチなどに向いてると言えます。
また、リキテックスを実際に使用した感じとしては、仕上がりが他のアクリル絵具よりも「光沢がある表面になる」と言う感じがしました。
そして、リキテックスの価格は他のアクリル絵具よりも少し高めとなっています。
リキテックスのアクリルガッシュ
リキテックスの「アクリルガッシュ」は「ガッシュ・アクリリック」と言う名前で発売されていて、全74色あります。
こちらも、通常の「アクリル絵具」よりも顔料濃度が高いため下の色を覆い隠す力が強いのが特徴です。
また、リキテックスも古くからあるメーカーなので好んで愛用している絵描きも多く、安心して使える絵具の一つと言えます。
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ターナーのアクリル絵具
ターナーは1946年に創業された日本の絵具メーカーで、アクリル絵具に関しては国内最大手メーカーと言っても過言ではないでしょう。
そして、ターナーの「アクリル絵具」は「ゴールデンアクリリックス」と言う名前で、普通色全85色のうち60色が純粋な単一の顔料で作られているのが特徴です。
また、残りの25色はグレーや鮮やかな黄緑、パステル色など、混ぜないと作れない色となっていて、さらに深みを出す為にあえて違う顔料を混ぜて作られたモノとなっています。
ただ、他の絵具メーカーは100色を超えてるだけに「ゴールデンアクリリック」は85色と若干色数が少なめですが、発色の良い色が揃ってるので制作に問題はありません。
そして、使用した感じとしては練りは柔らかめで、こちらも水をあまり使用しなくてもスーッと伸び、発色も良いのが特徴と言えます。
しかし、価格は他のメーカーよりも若干高めの傾向ですので、特にこだわりが無いならアクリル絵具に関しては安いメーカーのものでも良いと思います。
ただ、ターナーは「アクリルガッシュ」にすごい力を入れてるメーカーなので、アクリルガッシュは断然「ターナー」と言えます。
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ターナーのアクリルガッシュ
ターナーは1982年に国内で初めて「アクリルガッシュ」を製品化したメーカーなので、どちらかと言うと「アクリルガッシュ」の方が有名です。
そして、「アクリルガッシュ(普通色)」は全74色で、それ以外にも以下のような種類があります。
- グレイッシュシリーズ(全6色)
- パステルシリーズ(全15色)
- ジャパネスクカラー(全69色)
- パールシリーズ(全6色)
- ミキシングシリーズ(全3色)
- メタリックシリーズ(全6色)
- ラメカラーシリーズ(全13色)
- ルミナスシリーズ(全6色)
これらは全て「アクリルガッシュ」で全ての色を足すと192色もあり、「アクリルガッシュ」を使うのではあれば、ターナーがベストと言えるのではないでしょうか。
特に「ジャパネスクカラー」は普通色並みの69色もあるので、希望の色は普通色とジャパネスクカラーだけでも見つかると言えます。
そういう意味でも、アクリルガッシュで色に徹底的にこだわった作品を作るなら、色が豊富にある「ターナー」がおすすめです(^^)
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ターレンスのアクリル絵具
ターレンスはもともとオランダの絵具メーカーでしたが、1991年に日本のサクラクレパスが買収し、それ以後は「ターレンス・ジャパン」として絵具類を取り扱っています。
また、ターレンスのアクリル絵具は「アムステルダム・アクリリックカラー」と言う名前で発売されていて、基本色73色+特別色17色の計90色があります。
そして、「アムステルダム」の大きな特徴としては120mlの大容量で、安い所では600円前後で買える所です。
なので、大きなキャンバスなどに絵を描く場合は大量の絵具が必要になる為、大容量で格安のアムステルダムはかなり重宝します。
もちろん、大容量で格安だからと言って絵具の質が悪いと言う事もなく、使用した感じは「リキテックス」に似た感じの仕上がりとなり、高い耐光性のある表面となります。
なので、アクリル絵具で100号などの「大作」を描く場合は、アムステルダムのアクリル絵具がおすすめと言えます。
楽天市場⇒単色バラ売り120ml アムステルダム アクリリックカラー
ターレンスのアクリルガッシュ
ターレンスのアクリルガッシュは、「アムステルダム・アクリリックガッシュ」と言う名前で発売されています。
また、種類としては普通色全58色+特別職全9色+ホワイティシリーズ全13色の計80色があり、「ガッシュ」も相当な色が揃っているのが特徴です。
そして、アクリリック・ガッシュの方は容量が70mlとアクリル絵具よりも少なくなりますが、価格も安い所では350円くらいなので、非常にリーズナブルと言えます。
なので、容量が多くなるべく安いアクリルガッシュを求めてるなら、ターレンスのアクリルガッシュをおすすめします。
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海外の安いアクリル絵具
大きめの画材屋に行くと、聞いた事も無いようなメーカーの大容量のアクリル絵具が、めちゃくちゃ安い金額で売られてる場合があります。
ただ、それらも決して悪いものでは無いのですが、中にはいつも使ってるアクリル絵具と同じ名前でも全然違う色になる場合があるので注意が必要です。
恐らく、安い絵具は顔料の濃度が低いので全体的に色が薄い感じがして、発色もかなり悪いと感じます。
なので、安いからと大量に色んな色を一度に購入すると後悔するハメにもなるため、妖しい安い絵具はとりあえず1本だけ購入して試した方が無難です。
ただ、下地用として使う場合は安い絵具で全然いいので、そのようなプロセスで絵を描く場合は安い海外のアクリル絵具もおすすめです(^^)
「アクリル絵具」に向いてる作品の傾向
アクリル絵具は、絵具に「透明性」があるのが最大の特徴と言えます。
なので、作品の傾向としては色を重ねて深みを出すような作品が向いていて、有名な絵では現代美術家の「奈良美智」さんの作品などが良い例ではないでしょうか。
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奈良美智さんのペインティング作品は、何層も色を重ねて作られていて、下の色が透けて見えるキラキラした深みのある色彩が魅力です。
また、透明性のあるアクリル絵具は厚塗りしても下の色が見えたりするので、比較的どんな作風でも色を重ねる事で深みのある色彩が無限に作れるのが特徴と言えます。
「アクリルガッシュ」に向いてる作品の傾向
アクリルガッシュは、絵具の「不透明さ」が最大の特徴です。
なので、色を重ねて深みを出すようなものでは無く、単色をハッキリさせた絵に向いてると言えます。
こちらも例を出すなら、同じく現代美術家の村上隆さんの作品が良い例ではないでしょうか。
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こちらの作品のような、単一にムラなく面を塗って作る場合は、透明性のあるアクリル絵具よりも「不透明」なアクリルガッシュの方が向いてると言えます。
なので、複雑な色彩では無くなるべく単一の色彩をきれいに塗るような作品を作る場合は、アクリルガッシュが断然塗りやすいのでおすすめです。
そして、作品の傾向としてはタッチを生かしたような荒々しい作品では無く、「デザイン的」なオシャレな作品に向いてると言えます。
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さいごに
「アクリル絵具」も「アクリルガッシュ」も、速乾性の絵具と言う事で違いは無いですが、その「特性」には違いがあります。
そして、これを知ってるのと知らないのとでは作品造りに大きな違いが出て来るので、出来れば作品の傾向にあった特性の絵具を選ぶ事が大事です。
また、「どちらか」と言う事では無く、特性を知った上で1つの作品で両方をうまく使い分ける事も出来る為、自分で色々試してやっていくのが一番と言えます。